【ボン(ドイツ西部)=豊田雄一郎】環境の国際会議生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が2010年10月、名古屋で開かれることに決まった。同条約のジョグラフ事務局長は「この会議を成功に導けば、名古屋は世界の環境首都だ」と語った。愛・地球博(愛知万博)で培った“自然との共生”の理念を再び世界に発信する場となる。
名古屋開催を議決した瞬間、会場から大きな拍手が起きた。最前列にいた鴨下一郎環境省と神田真秋愛知県知事、松原武久名古屋市長が順番に立ち、手を振った。「アイチ」「ナゴヤ」の紹介に大きな掛け声も飛んだ。
壇上に上がった鴨下大臣は、議長を務めたG8環境省会合の合意事項や、生物多様性基本法の成立を報告。神田知事が愛知万博を紹介したのに続き、松原市長は「万博で未来の子供に美しい地球を贈り渡すと約束した。実現の為、環境に優しい行動を市民に呼びかけている。その協働をCOP10で紹介したい」と述べた。
市長は最後に親指、人さし指小指の三本を立てるポーズ。愛知万博の開会式でも紹介された手話で「アイラブユー」を意味する万国共通の言語だ。万博の理念継承の思いを込めたメッセージに、拍手はさらに大きく響いた。
COPでは非政府組織(NGO)も関係会議を開催するなど重責を担う。30日午後、会場の一角でボンと名古屋のNGOがそろって記者会見を開き、政府に条約の実施を働きかける必要性を強調した。
日本から約20人が参加、生物多様性フォーラム(名古屋市)の原野好正さんは「モロッコのタコを食いつくし、エビを養殖する場所を作るためにインドネシアのマングローブを伐採する。日本は世界の生物多様性に影響を与えている。COP10を機に考えるべきことは多い」とはなした。

COP10の主会場は名古屋国際会議場(名古屋市熱田区)。約190の国と地域から5000人を超える関係者が集まる。
世界では15分に1つの種が消えているとの学説があり、名古屋市はCOP10までに、生物が絶滅する速度を分かりやすく示す時計をつくる。里山の再生を進める「東山の森」や、藤前干潟などへのツアーも計画している。
2010年は、国連の「国際生物多様性年」。
この年に名古屋で開かれることが決まった同条約第10回締約国会議(COP10)では抽象的な「生物多様性の損失速度を顕著に抑える」との現在の目標から、具体的な数値目標を示すと決められており、関係者の期待はかなり高い。議長役の日本が期待にこたえるには相当な覚悟が必要だ。
COP9も終盤に差し掛かった28日、ボンの会場は一瞬の沈黙後、盛大な拍手に包まれた。
ドイツのメルケル首相が、森林保護にまず5億ユーロ(約820億円)を投じ、5年後からは毎年、同額を費やすと表明したのだ。
「一桁か二桁言い間違えたのではないか」。会場の出席者は、複雑な表情を隠しきれなかった。2年後の同じ場で、こうしたパフォーマンスへの期待を感じたからだ。
次回が名古屋となった最大の功労者に、条約事務局のジョグラフ局長の顔を思い浮かべる関係者は少なくない。
事務局の運営費約10億円のうち、日本は毎年2割を、ドイツは1割強を負担している。冗舌で、何事も即決型の局長は05年の就任後、開催国として金銭的な貢献度の上位2カ国を選んだことになる。
象徴する場面が29日にあった。「これは相当な人物だな」。局長と会談した愛知県の神田真秋知事は漏らした。
局長はひたすら「金、金、金」とまくしたてた。「里山」構想はすばらしい。2万ドル(約210万円)で本をつくり世界に配りたい」「植樹のため、10億人の署名を集めたい」「ただ、私たちにはお金がない」。
次の名古屋がいかに重要になるか細かく説明し「今回、ドイツが成功したのはそれだけお金をかけたから。むろん企業の参加も必要だ」。
視線の先には、会談に同席した名古屋財界トップの面々が。COP9はフォルクスワーゲン(VW)やルフトハンザ航空などから1億円以上集めた。企業の協賛金は事実上、今回が初めてだった。
「ナゴヤ・ターゲット(数値目標)を実現できたら(1997年の気候変動枠組み条約国で議決した)『京都議定書』と並び、歴史に残る」。COP10誘致委員会のアドバイザーも務める名古屋市立大学の香坂玲准教授(環境政策・経済)は期待を込める。
ただ具体的なテーマは幅広く、難解だ。中でもバイオ燃料や遺伝子組み換え、生物資源の利益配分・・・先進国と発展途上国の立場の違いを中心に、意見集約は困難を極めることが予想される。