「ポスト京都」の新たな枠組みづくりに向け、国連気候変動枠組み条約の第13回締約国会議(COP13)で合意した「バリ・ロードマップ(行程表)」。
2009年を目標に、人間による地球温暖化との闘いへの道筋は付けられたが、先行きは不透明のままだ。今回の会議で浮き彫りになったのは、世界最大の二酸化炭素(CO2)排出国、米国の動きと非政府組織(NGO)の重要性。
会議場から「キョウト」の行方を探ると―。(ヌサドゥア・蒲敏哉、吉枝道生)
11日、インドネシア・バリ島で潘基文国連事務総長も日本のNGO「気候ネットワーク」などのイベントに出席、京都議定書採択10年を祝った。
◆ 変 化
「私の隣に座っている国は温暖化問題に真剣に取り組む意思はあるのか」。徹夜で激論が続いた15日の閣僚級全体会合。発展途上国は先進国で唯一、「『京都議定書』を批准していない米国の姿勢をやり玉にあげた。当初、米国は協議に積極的にかかわる姿勢を見せたため、各国は“復帰”を歓迎したが、共同議長原案に温室効果ガスの削減数値目標が盛り込まれると態度が硬化。米代表団を率いるドブリアンスキー国務次官は「2013年以降の枠組みは柔軟でなければならない」と繰り返し、「ポスト京都の骨抜きを狙っている」との批判も受けた。
米復帰優先し妥協

ブッシュ米政権の任期は一年あまり。各国では“ブッシュ後”への期待が高まり、欧州連合(EU)側は「私の隣に座っている国は温暖化問題に真剣に「今回は妥協した」と皮肉な発言も。
結果的に、ロードマップに具体的な数値目標は盛り込まれず、米国の言い分が通った形になった。
ドブリアンスキー氏は「私たちは皆さんの話に一生懸命に耳を傾けてきた」と謙虚な姿勢も見せたが、政権交代が迫る中、どこまで本音なのか―。
ロードマップ上で問われることになる。
◆ 台 頭
毎回、会議に参加する多数のNGOだが、今回ほど主催者側が歩み寄りを見せたのは初めて。最も象徴的だったのは、日本のNGO「気候ネットワーク」などが開いた京都議定書採択十年記念のイベントに国連の潘基文(バン・キムン)事務総長が参加したことだ。和服姿のメンバーに囲まれ笑みを浮かべるシーンも見られた。
NGOは存在感増す
NGOの浅岡美恵代表は「長年の活動で条約事務局から信頼を得ることができたからだろう」と異例の計らいを喜んだ。
鴨下一郎環境相は議定書ケーキに入刀するパフォーマンスも。実は沖縄の普天間飛行場移設問題でも活動する国際環境保護団体「グリーンピース」が用意したケーキだ。政府関係者も「現場の閣僚でここまでやるのは珍しい」とびっくり。
日本政府は温暖化問題でNGOとの連帯強化を掲げており、これは国際的な流れでもある。あるNGOメンバーは「大臣はケーキを食べた。このクスリはじわじわ効くよ」とニヤリと笑った。
◆ 京 都
ポスト京都で議定書はどうなるのか―。条約上は13年以降も効力があり、交渉次第では「改定議定書」として第二約束期間以降も名を残すことは可能だ。
コンゴ民主共和国の代表団は「キョウトは温暖化対策の代名詞。これまでの浸透度から考えれば改訂版が望ましい」と強調する。
日本代表団も「経団連や国民も京都の名前があったからこそ感心が高かった。よその国の地名をつけた議定書になると急に気運がしぼむのではないか」と懸念する。
09年にCOP15を開催するデンマークのヘデゴー環境相は「キョウト」という子どもに次いで、新しい子どもがわが国で生まれる。まかせてほしい」と“コペンハーゲン議定書”を暗にアピールした。
EU代表団メンバーは「どこの名前がついてもこだわりはない。デンマークの地名がつけば親しみはあるけど、キョウトも良い名前」と話しながらも、「米国で会議を開いてワシントン議定書にすれば一番効果がある」と徹夜明けの疲れ切った表情で名案を披露した。